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大阪高等裁判所 昭和63年(行コ)42号 判決 1990年11月28日

大阪府東大阪市衣摺二丁目七番一八号

控訴人

安田忠義

右訴訟代理人弁護士

宮地光子

長野真一郎

大阪府東大阪市永和二丁目三番八号

被控訴人

東大阪税務署長 岩坂弘

右指定代理人

源孝治

辻尾末博

南和夫

的野珠輝

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し、昭和五七年七月二日付で控訴人の昭和五四年分ないし昭和五六年分の所得税についてした各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち、所得金額が昭和五四年分については一四五万円、昭和五五年分については一八一万円、昭和五六年分については二四五万一〇〇〇円を超える部分をいずれも取消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張及び証拠関係

次のとおり付加するほかは、原判決の事実摘示及び当審記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決六九枚目別表一三の上から三行目の「振出人」を「振出人・引受人」と改める)。

一  控訴人

1  売上帳(甲第一号証の一ないし八)と運送費請求書(甲第九号証の一ないし二四)との不一致について

原判決は、売上帳(甲第一号証の一ないし八)の信用性を否定する根拠として住井運送の運送費請求書(甲第九号証の一ないし二四)との不一致のあることを指摘しているが(原判決添付別表一五―一、同二参照)、これについては、以下に主張するとおり、右判断は誤っており、本件では、控訴人が原審から主張してきたとおり、右売上帳に従い、実額による売上額を前提として課税されるべきである。

イ 甲第九号証の七の三について

住井運送は、昭和五五年六月二三日に運送したもののほか、同月二一日に運搬したものもこれにより同時に請求したのであり(甲第二号証の三六、同号証の三八、第一号証の一参照)、七ケースが売上帳に記載がないとするのは誤りである。

ロ 同号証の八の四について

住井運送が重複して請求したもので、売上帳に記載されていないのは当然である(甲第九号証の八の三参照)。

ハ 同号証の九の八について

指摘されている二三ケースは、昭和五五年九月四日に納入されたものを手直しした分であり、売上帳にYS一〇〇、八ケース、一五ケースとして記載されているものがそれである。なお、同月八日に初めて納入されたのは三三ケースのみである(甲第二号証の五〇参照)。

ニ 同号証の九の一二について

イと同じく昭和五五年九月一三日納入分(甲第二号証の五五参照。ただし甲第一号証の一にはYS一〇〇と誤記されている)を同月一五日分と一緒に請求してきたもので、右一五日に納入したのは一〇ケースのみであった(甲第二号証の五六参照)。

ホ 同号証の一〇の一一について

出庫したのは一二ケースであったが(甲第二号証の七九参照)、うちYS七〇L、五〇〇足は返品されたため、納入したのは残四六〇足(これは六ケースより少ない数である)であった。

ヘ 同号証の一一の二、同号証の一一の一〇、同号証の一一の一一について

これらについては、物品受領書が現存していないため、書証によりこれらの誤りを指摘することはできないが、これがなくても、甲第一号証が信頼するに足りるものであることは既に十分立証できている。

ト 同号証の一三の六について

住井運送の記載誤りである。昭和五六年一月一七日に納入したのは二ケースのみである(甲第二号証の九四参照)。

チ 同号証の一五の五について

甲第二号証の一四四には、一二ケースとの記載もあるが、その内訳明細を合計すると七ケースしかない。一二ケースは計算間違いであり、住井運送もこれをそのまま転記したのであろう。

リ 同号証の一五の七について

これは早川商店に納入した分を林商会に転送したもので、その運送費のみ控訴人に請求があったのである(甲第一号証の二参照)。

ヌ 同号証の二〇の一一について

誤りはない。甲第二号証の二〇一に記載のYS七一LL以外の分も全部売上帳に記載されている。

ル 同号証の一の四について

これは昭和五四年度の売上帳に記載されていたものであるが、同年度の売上帳は紛失している。

ヲ 同号証の一七の五について

林商会に対する売上分であり(甲第二号証の一五四、甲第一号証の一参照)、早川商店に対する売上ではない。たまたま右運送費請求書に早川分と林分が一緒に記載されたにすぎない。

ワ 同号証の一八の一一について

誤りはない。早川商店の依頼により北川に直送している(甲第三号証の七一、甲第一号証の二参照)。

カ 同号証の一三の三について

林商会への売上分である(甲第二号証の八九、甲第一号証の一参照)。

2  売上先別ケース(箱)の使用量と購入量との関係について

甲第三二、三三号証によれば、昭和五五年度はケースの使用数八一八三、購入数七九二九で二五四不足、昭和五六年度は七九五二と八一二六で一七四購入分が超過となるのであるが、いずれも通常在庫数の二〇〇ないし三〇〇個の範囲内に収まる数字であり、不合理なものではない。なお、被控訴人は、月別でこれを見ると、ケースの不足する月が相当数生じると主張するが、在庫不足になるのは僅か二か月にすぎず(控訴人平成元年八月三一日付け準備書面参照)、しかも、これは仕入れ先に注文量の在庫がないため、とりあえず注文の一部のみを納入して急場をしのぎ、注文量全部を納入し終わってから伝票を発行する、いわゆるピストン納入が行われたことを示すもので、合理的な説明ができることである。

3  売上足数の重量と仕入れた原材料の重量比較について

各サイズ別の重量差を考慮した売上足数の重量によれば、昭和五五年度は仕入量が三九七六・九三四キログラム不足、昭和五六年度は六五一四・九九二キログラムも仕入量が製品重量を上回っているのであるが、右昭和五五年度分について売上分が多いのは昭和五四年度の商品在庫分を販売したためであり、昭和五六年度分が仕入量が多いのは早川商店から九〇〇〇キログラムもの原料(RB樹脂)を引き取ったためである。RB樹脂は通常株式会社コーセンから仕入れているのであるが、これは事実上割当制になっており、割当枠を確保するために平常どおりの仕入れを続けるほかなかったのである。

4  林商会に対する売上帳の記載等について

林商会については、入金日が不規則なため、控訴人は入金ごとに自ら鉛筆でメモをしておき、後日これをまとめて売上帳に記入していたのであり、また鉛筆書の抹消についても、これは歩引(現金で支払いを受けたときに、手形で支払いを受けた場合に引き直して値引きすること)等の計算を帳簿上で行い、その計算結果を帳簿に記載し直した上で、計算作業のメモ書きを抹消したにすぎないもので、特に問題とするに足りない。

控訴人の売上帳の一部には確かに間違いもあるが、これは控訴人のような零細な業者では通常あり得ることであって、本質的な誤りでなく、少なくとも大きな売上が隠匿されていることをうかがわせるに足りるようなものではない。

本件で問題とされるべきは、被控訴人のなした推計の合理性の当否である。被控訴人の行う同業者推計は全くの匿名業者によるものであり、その信用性は控訴人の帳簿・伝票類の資料に比して低い上、被控訴人が主張する各業者の売上原価率は最大のものと最小のものとで二〇パーセントもの格差が生じており、これを売上金額に引き直すと、粗利益で一〇〇〇万円もの差が出るのであって、このように格差の大きい業者を平均しても、控訴人の事業の実額を示すものとは到底いえない。

5  被控訴人は、売上帳に記載があるのに、これに対応した物品受領書等が欠けているものがあることを問題にするが、物品受領書等に記載があるのに、売上帳にその記載が漏れているものを問題にするのはともかくとして、その逆の場合を問題とするのは本末転倒である。また、運送賃請求書は、控訴人の製品のほとんどを運送していた住井運送が作成したものであり、これを見れば、売上帳に記載されている売上先以外には控訴人の取引先はないことが明らかである。右請求書は一か月ごとにその月の分をまとめて表紙をつけ、それに合計額を記載したものであり、その一部を控訴人が隠そうとしてもできるものではない。売上帳に記載がありながら、これに対応した運送賃請求書のないものは、控訴人自身が運送したか、住井運送の請求漏れであろう。運送賃請求書は必ず物品受領書等により作成されるとまでは控訴人も供述していないのであって、手直し分について物品受領書等にその旨の記載がないとしても、運送を依頼する以上、控訴人は口頭ででも住井運送にはそれを伝えた可能性はある。

二  被控訴人

控訴人売上帳(甲第一号証の一ないし八)は、控訴人の昭和五五、五六年度分の売上のすべてを記載したものといえず、また、控訴人の主張はいずれも理由がないから、控訴人の右両年度分の総売上金額を実額で算定することはできない。すなわち、

1  売上帳と物品受領書、納品書控、運送賃請求書との不一致について

例えば、林商会、早川商店分について物品受領書、納品書控(以下「物品受領書等」という)の提出されていない取引が多数あり(被控訴人平成二年八月九日付け第四準備書面(以下「被控訴人準備書面」という)添付別表1、2参照)、また川東商店、伊藤ゴム工業所、近江産業についてはすべての取引について物品受領書等の提出がない。もちろん、原判決でも指摘されたとおり、売上帳は物品受領書等に基づき記載されたというにもかかわらず、売上帳への記載漏れがあり(原判決添付別表一四)、これは控訴人も認めるところである。

運送賃請求書についても、例えば、林商会関係についてみると、控訴人の主張するところに従っても、売上金額昭和五五年度分三三八九万八〇三五円、昭和五六年度分一八六四万三六五〇円のうち、運送賃請求書のないものは昭和五五年度分六三三万二〇三〇円(約一八パーセント)、昭和五六年度分七四七万九九〇五円(約四〇パーセント)にものぼっており、また、運送賃請求書があるのに売上帳に記載が漏れているものについても(右記載の食い違いは、原判決添付別表一五―一、同二ほか、甲第九号証の二の一六、同号証の一二の三、同号証の三の四と甲第一号証の一の間にもある)、控訴人は住井運送の誤記、重複請求、不良品の手直し、後日一括請求である等と主張するが、住井運送は物品受領書等により運送賃請求書を作成していたというのであるから、右控訴人の弁明も、本訴において運送賃請求書に対応する物品受領書等を証拠として提出していないか、苦しまぎれの言い訳(手直し)等にすぎない(右売上証への記載漏れとこれについての控訴人の弁明が不当であることの詳細については、被控訴人準備書面第一、二参照)。

また、控訴人は納品のすべてを住井運送に委ねていたわけではなく、控訴人自身が納品したり、取引先が商品を取りに来ることもあったのであり、これらについて売上帳に記載漏れがあることは容易に推認される。

2  売上先別ケース数とケース購入数の比較について

控訴人は、在庫ケース数にマイナスが生じるのは、昭和五五年一〇、一一月のみであり、これもピストン納入に起因すると主張するが、控訴人と同一基準により在庫ケース数の推移をみると、ケース不足が生じる月は相当数にのぼる(被控訴人準備書面第四参照)のであって、控訴人主張の売上先別ケース使用数とケース購入数には対応関係があるとは考えられない。

3  売上足数の製品重量と仕入原料との重量比較について

控訴人主張のサイズ別売上足数と原料使用量の比較については(甲第六〇ないし第六三号証参照)、比較の対象となっている売上足数が甲第六〇、六一号証と第六二、六三号証で食い違っているものが多数あり(被控訴人準備書面第五参照)、原材料の仕入重量も正確なものとはいいがたいほか、各年末の在庫重量の立証もなく、また控訴人の主張に従うとしても、昭和五六年度分は仕入原材料が製品重量を六五一五キログラムも上回ることになる。

4  林商会への売上帳(甲第一号証の一)の記載について

林商会以外の売上先の売上帳には、入金の種別、額、値引、歩引の記載がなされているのに対し、最大の取引先である林商会の売上帳については、控訴人の本人供述(当審)によれば、一旦これらを鉛筆で記入しながら、後に歩引計算をしてこれらを抹消する取り扱いをしていたというのであるが、これは他の取引先の売上帳の記載と比してもいかにも不自然であるばかりでなく、このような記載方法では、後日その正誤を売上帳により検証することもできない。

なお、原判決が指摘する以外にも、右林商会の売上帳には記載の誤り、不正確なものがある(昭和五五年六月二二日欄の単価は一一〇円であるべきで、売上金額は九万四七一〇円となるはずである。同年七月七日欄では、「YS―五〇クリームM四二〇足」を単価九五円で売り渡していることが明らかであるのに、その売上金額三万九九〇〇円の記載がない。昭和五六年九月二〇日締め切りの売上は二四〇万八七四五円となるはずのところ、二三一万二七四五円と記載されている)。

さらに、控訴人は、被控訴人の同業者推計は匿名業者によるものであり、またその事業形態にも大きな差異があり、被控訴人のした推計課税には合理性がないと主張するのであるが、右資料とした同業者の氏名等を開示することは守秘義務に触れることであり(所得税法二四三条、国家公務員法一〇〇条一項)、また推計課税の基準となる同業者は各同業者間に個々的な差異があることは当然の前提となっているのであって、問題とされるべきは、これらの差異ではなく、抽出基準自体の合理性である。このような差異は同業者率(売上原価率)の平均値に包摂され、各同業者の個別的、具体的事情は捨象されて客観性、普遍性を持つに至るのである。原審において主張したとおり、本件においては、大阪国税局長の一般通達により、抽出基準を充足する者を機械的に抽出しており、またその件数も資料の客観性を示すに足りるものであり、十分に合理性を有するといえる。

5  売上帳に記載されている以外の取引先からの入金について

原判決添付別表一三に記載されているとおり、控訴人には売上帳に記載されている取引先以外とみられる者からの入金があり、したがって、売上帳に記載されている取引先以外の者と取引がなされていた蓋然性が高い。右別表一三について、控訴人はいろいろと弁解をするが、到底信用するに値しない(被控訴人準備書面第三参照)。

また、早川商店振出、額面一二五万円の約束手形の入金の事実(乙第二六号証の三、四)に対し、控訴人はこれは早川商店への貸付けであるとの趣旨の供述をするのであるが、これは信用できないばかりでなく、肝腎の割引料や利息の計上もなされていない。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴各請求はいずれも棄却すべきものと判断するが、その理由は以下に付加、訂正、削除するほかは原判決の理由に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一九枚目表七、八行目、二一枚目裏一行目、同四行目、二四枚目表六行目の「第一」の前に「原審」を、二一枚目裏四行目の「第二回」の次に「及び当審」をそれぞれ加え、二二枚目表八行目冒頭の「ほとんど」を削除し、二四枚目表一二行目の「原告」の前に「控訴人及び」を加える。

2  原判決二六枚目表五行目の「されていないこと」の次に「(同じことは、右売上帳の昭和五五年七月七日のYS―五〇(クリーム)Mサイズ四二〇足についてもいえるし、また右売上帳の同年六月二二日欄のYS―一〇〇(L)八六一足の代金は八万六一〇〇円と記載されているが、他の欄(例えば同年七月一日欄)をみると、この単価は一一〇円であることが認められるから、右代金は九万四七一〇円となるべきはずである)」を、同裏五行目の「計上漏れがあること」の次に「(同じく締め切り計算の間違いは、例えば昭和五六年九月二〇日締め切り分にもみられる)」を、同九行目の「昭和五五年」の前に「前掲甲第一号証の二ないしい八に記載されている他の取引先の分に比べて異常に多い、」をそれぞれ加え、同行末尾の「、」を抹消し、二七枚目表三行目冒頭の「なお」を「その他、控訴人は当審において、その原因を、商品を運送した業者の記載過誤であるとか、重複請求であるとか、返品又は修理分であるとか、運送費請求書の日付以前に運送した分を含む請求であるとか、売上帳、物品受領書等の紛失によるものであるとか等と弁明しているのであるが」と改め、同裏五行目の「とおり」の次に「(もっとも、この中には甲第九号証の一三の六、同号証の一五の五、同号証の二〇の一一など、控訴人の前記弁明が正しいのでないかと思われるものも含まれているのであるが、関係帳簿等の記載が正確さを欠いていることを示していることには相違がない)」を加え、同一〇行目末尾の「と、売上帳」から同末行の「割愛した。)」までを「(甲第九号証)には記載されているのに、控訴人の売上帳(甲第一号証の一)にはその一部の記載が漏れているもの(例えば甲第九号証の二の一六、同号証の三の四、同号証の一二の三などに対応する分)や、控訴人の本人供述(当審)に従えば、甲第二号証の二〇〇は同号証の二〇一を書き直したものであるというのであるから、本来両書面の中身は同一であるべきはずであるが、右両書面には不一致の部分がある)」と改め、二八枚目裏一行目の「前同様」を削除し、同二行目の「であるが、」の次に「しかも」を加え、同五行目の「同商店について」から同末行冒頭の「ば」までを「その他の分も控訴人の弁明にも一理があり、必ずしも早川商店等に対する売上ともいいがたいものがあるのであって」と改める。

3  原判決三〇枚目裏一一行目末尾の次に改行して「控訴人自身も主張しているとおり、控訴人方には昭和五三年度に税務調査の手が入ったというのであるから、以降はより慎重に帳簿類の整理保管に留意するのが通常人のとる態度であると思われるにもかかわらず、控訴人の本人尋問の結果(原審第一、二回及び当審)によれば、控訴人は昭和五四年度の全売上帳及び領収書類、更には昭和五五年度分についても売上帳の一部を廃棄または紛失したというのであるが、仮にこのとおりのことが行われたとすれば、控訴人の右行為には甚だ納得しがたいものがあるというほかはない。また、控訴人は、林商会以外の取引については控訴人の妻が帳簿の整理を担当していたが、林商会の取引分は入金が不規則であった等のため、特に控訴人自身が帳簿の記載を行うことにしたのであり、その方法は入金や売上があると鉛筆で紙切れにメモをしておき、後日これをまとめて売上帳(甲第一号証の一)に移記したと供述(原審第一、二回及び当審)しているのであって、右のとおり、控訴人の売上帳のうち林商会分は取引の都度記帳がなされたのではないばかりでなく、あるいは右記帳の正確性を担保することができたかもしれない右メモ書きも残されておらず、しかもその記載は鉛筆書きであって後日の改竄等が容易にできるものであり(前記鉛筆書の抹消部分も、控訴人の本人供述によれば、林商会分は支払明細書もなく、歩引(現金で入金があったとき、年五パーセントぐらいの手形割引料相当額を値引くこと)等の計算をした後にこれを抹消したものであるというのである)、その記載内容も前記認定のとおり、入金内訳等の記載もほとんどなされていない有様であって、これらの事情のあることを考え併せると、林商会との取引関係が控訴人の売上帳(甲第一号証の一)に正確に記載されているかはかなり疑わしいといわざるを得ない。」を、三一枚目裏一一行目の「弁論の全趣旨」の前に「控訴人の本人尋問の結果(当審)、」をそれぞれ加える。

4  原判決三三枚目裏九行目の「(第二回)」を「(原審第二回及び当審)」と改め、三四枚目表九行目末尾の「第一五号証」の次に「、第二八号証の三の一、二」を、同一二行目の「前記」の次に「米田振出にかかる約束手形や」をそれぞれ加え、同裏末行の「覆えす」を「覆す」と改め、三五枚目裏四行目の「認めがたい」の次に「(これらのほか、早川商店に関するものではあるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二六、二七号証の各一ないし四によれば、控訴人は早川商店から約束手形を受け取っていながら、売上帳にその記載が漏れているもののあることが認められる。控訴人はこれについて、早川商店に手形による融資をしたものであると供述し(当審)、これに沿う趣旨の証拠として、控訴人の当審における本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第六四号証をも提出するが、控訴人の右弁明も被控訴人からの問題提起に対するつじつま合わせ的な応答ともみられるものがあり、たやすく信じることができない)」を加える。

5  原判決三七枚目表三行目の「原材料の」の次に「使用」を加え、同行及び同一一行目の「第二五ないし」をそれぞれ抹消し、同四行目の「第三一号証」の次と同末行冒頭の「四」の次に「、第六〇ないし第六三号証」をそれぞれ加え、同一〇行目の「(第一回)」を「(原審第一回及び当審)」と改め、同一二行目の「第三一号証、」の次に「第三九号証の一ないし二六、」を同裏一行目の「売上足数」の前に「サイズ別」をそれぞれ加え、同行の「五六万六九五五」を「五六万六六二五」と、同二行目の「六〇万三六〇一」を「五九万八七七〇」と、同四行目の「一一万四三〇一」を「一一万九四一一」と、同五行目の「一〇万八八四九」を「一〇万九六一二」と、同九行目冒頭の「一二七」を「一一二七」とそれぞれ改め、同行の「キログラム」の次に「(株式会社コーセンからの仕入量は前掲甲第三九号証の一ないし二六によれば計三万五七一九キログラムであり、また前掲甲第四六号証の一ないし四によれば共栄化学工業株式会社からの仕入分も四〇八七キログラムあり、これらにつき前掲甲第二七号証は正確でない)」を加え、三八枚目表一行目末尾の「一一」から同二行目末尾までを「一一万六一二七キログラムとなり、昭和五五年度については仕入れ原料に対し使用量が三九七六キログラム超過し、昭和五六年度については逆に仕入原料が使用量に対し六五一五キログラムも多いことが認められる。」と同三行目冒頭から三九枚目表五行目冒頭の「が、これは、」までを「右の結果は、」と、同五行目の「(第一回)」を「(原審第一回及び当審)」とそれぞれ改め、同八行目末尾の「出ること」の次に「、さらには原料の在庫量が五〇〇キログラムないし二トンぐらいあったこと」を、同末行末尾に続けて「なお、控訴人は当審において、昭和五六年度は原材料の仕入量が多いが、それは材料の仕入れ先でもない早川商店から九〇〇〇キログラムもRB樹脂を買わされた上(甲第四二号証参照)、RB樹脂は統制的な商品で取引枠を確保しておくため、通常の取引先からの仕入れも続けておかなければならなかったためであると供述する。しかし、前記認定のとおり、昭和五六年度は昭和五五年度に比べ原材料の仕入量自体は九〇〇〇キログラム以上も少ないのであり、また右控訴人の言い分もにわかにはこれを信じがたいというほかはない。」をそれぞれ加え、同裏一行目の「第二五号証」を「第六〇、六一号証」と、同二行目冒頭の「(第一回)」を「(原審第一回)」と、同五行目の「五六万六九五五」を「五六万六六二五」と、同六行目の「六〇万三六〇一」を「五九万八七七〇」と、四〇枚目表一一行目の「(第一回)」を「(原審第一回)」とそれぞれ改め、同裏六行目末尾の「七九二九個」の次に「(昭和五四年一二月二五日購入数も含む)」を加え、同七行目の「が、昭和五五年」から同一一行目の「八六二四個となる」までを削除し、同一二行目冒頭から四一枚目表七行目末尾までを「ところで、控訴人は、右ケース購入数とその使用数との対比において(ただし、繰り越し在庫数を三〇〇とする)、在庫ケースが不足となるのは昭和五五年一〇、一一月の二か月のみであり、これはピストン納入によりまかなわれたと主張し、甲第五八、五九号証をその計算書として提出する。これに対し、被控訴人は、原判決添付別表一四のとおりの修正を加えた上で、控訴人とほぼ同じ手法で計算したところ、昭和五五年一〇月以降はほとんど毎月ケース不足となると反駁しており(被控訴人準備書面第四参照)、使用数については被控訴人のように修正した数値で検討するのが正しい方法というべきであり、したがって、ケースの購入数とその使用数との比較検討によっても控訴人がもくろんだ前記目的は達せられたとはいいがたい。」と改める。

6  原判決四五枚目裏一、二行目の「(第一回)」を「(原審第一回及び当審)」と、同一〇行目、四六枚目表二行目、四九枚目裏七行目、五四枚目表四行目の「(第一回)」を「(原審第一回)」とそれぞれ改め、四六枚目裏一一行目末尾の次に改行して「その他、控訴人は、選定された同業者は匿名であり信用できず、また事業形態にも大きな差異があり、これらによる推計課税には合理性がないとも主張するが、匿名の点は、守秘義務の対象となるものでやむを得ない上(所得税法二四三条等参照)、調査内容につきその正確性を疑わせるような事情も認められないのであって、氏名等を公表しないことのゆえをもって、右資料による推計が合理性がないということはできず、また、その事業形態に大きな差異があるとの点も、右同業者の抽出は、前記認定のとおり、大阪国税局長が設定した基準の枠内において機械的になされ、右差異もその結果生じたものであり、しかも右基準自体合理的なものであることも既に判示したとおりであって、同業者の中でも業態や事業規模、売上額等の差異があることは当然のことであって、本件においては、調査の対象とされた件数から見ても、これら同業者の多様性、個別性は包摂され平均化されているとみることができるのであり、右差異のあることをもって、右調査結果に基づく推計課税を不合理とすることもできない。」を加え、四八枚目裏四行目の「(円未満切捨)」を「(円未満切捨)」と、五〇枚目表五行目の「昭和五六年四月」を「昭和五六年七月」とそれぞれ改める。

二  よって、控訴人の本訴各請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 福富昌昭 裁判官 竹中邦夫)

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